認知症予防にも貢献する、アロマオイルの効果と使い方

「65歳以上の7人に1人がかかる」といわれている認知症ですが、近年は鳥取大学の研究により、精油を用いた芳香療法(アロマテラピー)によって認知機能の回復を図れる可能性があることが明らかになりました。

認知症は、物忘れの症状より前に、嗅覚と味覚が分からなくなるのだそうですが、アロマオイルで定期的に嗅覚を刺激することで、認知症の発症を遅らせるという実験データが報告されています。

覚醒(ローズマリー)と鎮静(真正ラベンダー)の効果が嗅神経再生へ影響し、脳神経が活性化して認知症の予防につながるそうです。効果が実証されたアロマオイルを日常に取り入れて、香りのある生活を楽しんでみませんか。

65歳以上の7人に1人が認知症に?

高齢化が進む中、「認知症」というキーワードを耳にする機会も増えましたね。
認知症とは、さまざまな原因で脳細胞の働きが悪くなったり死んでしまったりすることで、いろいろな障害が発生して生活に支障が出ている状態を指します。
認知症の原因はまだ明確になっておらず、根本的な治療薬も存在しないといわれています。

「加齢に伴う物忘れ」と「認知症」とを混同している人もいるかもしれませんが、両者には大きな違いがあります。脳の老化によって生じる「加齢に伴う物忘れ」は、あくまでも部分的な物忘れであり、ヒントがあれば思い出せることもあります。進行性もなく、日常生活に特に支障をきたしません。

一方「認知症」は、脳細胞の破壊によって発生します。物事全体を忘れてしまい、仮にヒントがあっても思い出すことができません。しかも進行性のため、日常生活に支障をきたしてしまうのです。現在日本では65歳以上の7人に1人が認知症になるといわれており、誰もが油断はできません。

認知症の種類とそれぞれの特徴

認知症には複数の種類が存在しますが、「アルツハイマー型認知症」「脳血管型認知症」「レビー小体型認知症」が代表的です。
中でもアルツハイマー型認知症は全体の約60%を占めるため、「認知症=アルツハイマー」と認識している人も多いようです。それぞれの認知症には、以下のような特徴があります。

アルツハイマー型

海馬を中心に、老人斑や神経原繊維変化が脳の広範囲に出現することで、脳の神経細胞が死滅してしまうことによって発生します。主な症状は認知機能障害(物忘れなど)、物を盗られたという妄想、徘徊などです。

レビー小体型

「レビー小体」という特殊な物質が生じ、脳の神経細胞が死滅することで発生します。主な症状は認知機能障害(注意力・視覚等の低下)、睡眠時の異常言動、幻視や妄想、うつ状態、パーキンソン症状などです。

脳血管性型

脳梗塞や脳出血といった疾患が原因で脳内の血液循環が悪化することで、脳の一部が壊死してしまうことによって発生します。主な症状は認知機能障害(まだら認知症)、感情のコントロールができない、手足のしびれや麻痺などです。

認知症にアロマテラピーが効果的な理由

これまで認知症は、脳の海馬がダメージを受けることで発生し、最初に現れる症状は「物忘れ」であるといわれてきました。海馬は比較的近い期間の記憶を格納している器官で、物忘れや記憶力の低下を防いでくれる重要な存在です。

しかし近年の研究によって、認知症になると「物忘れ」以前に「臭い」がわからなくなる嗅覚障害が起こることがわかってきました。
それによって、「臭いを感知する神経と海馬が密接に連携しているのでは?」とも考えられるようになっています。さらに、アロマの香りで嗅覚を刺激すれば、臭いを感知する神経と密接に連携している海馬も活性化し、認知症予防や認知機能改善につながるとも考えられているのです。

実際に鳥取大学医学部によって実施された研究で、アロマの刺激によって認知機能が向上する可能性があることが明らかになっています。

認知症の中でも最も多いのが、記憶力や思考力が衰えていく「アルツハイマー型認知症」。具体的な症状としてもの忘れなどを思い浮かべる方が多いかと思いますが、実はアルツハイマー型認知症は嗅覚の障害が先に現れます。 そのため、もの忘れの症状が始まる前に嗅覚に刺激を与えることで、認知症を予防できる可能性があるといわれているのです。 香りの情報は嗅覚をつかさどる「嗅神経」を通って脳の一部に伝えられます。香りの情報が伝わる箇所には、記憶をつかさどる「海馬」という部位があり、嗅覚を刺激することで間接的に海馬が刺激され、記憶力が活性化するのです。 参考論文:鳥取大学医学部「アルツハイマー病患者に対する アロマセラピーの有用性」

認知症に効果があるといわれているアロマオイル

ここでは朝と夜のそれぞれの時間帯に分けて、おすすめの種類と効能を説明していきます。

アルツハイマー病(AD)患者は昼夜が逆転している場合も多く、アロマにはサーカディアンリズム(一日の生体リズム)を、自律神経の作用に基づいて整え、起床後は交感神経を優位にして脳を活性化させ、就寝前は副交感神経を優位にして、活性化された脳を鎮めリラックスさせるという効果もあります。

集中力を高め、記憶力を強化する「ローズマリー」「レモン」を配合した精油。ローズマリーレモン

ローズマリー:ハーブとして料理などに使う人も多いローズマリーは、記憶力を高めたり集中力を上げたりする効果があります。

レモン:さっぱりとした爽やかな香りが特徴。気分をリフレッシュさせたり、高めてくれる効果があります。

心身をリラックスさせる鎮静作用の高い「ラベンダー」「スイートオレンジ」を配合した精油。
ラベンダーオレンジ

ラベンダー:安眠効果があることで知られるラベンダーは、心を穏やかにして、リラックスさせてくれる効果があります。

スイートオレンジ:レモンと同じ柑橘系ですが、なかでもやや甘めの香りがするスイートオレンジは、緊張感を和らげてくれる効果があります。

香りには好みがありますので、実際に使う際は介護される方が好む香りのオイルを使ってみましょう。 ちなみに、レモンとローズマリーの配合が最も効果があるとの事です。

これらの精油をディフューザーで拡散して、一日に数時間自宅で芳香浴をすれば認知症の予防にもつながるかもしれません。一日に数時間も芳香浴の時間をとるのが難しい場合は、アロマスプレーを衣類や寝具に吹きかけてもよいでしょう。


アロマオイルを使った認知症の予防方法

アロマオイルを使う方法はいくつかありますが、中でも簡単に取り入れることのできる方法をいくつかご紹介します。 最近では雑貨屋さんをはじめ、街の様々なお店でアロマオイルや道具が売っています。
どの方法を使っても効果が期待できますので、手に入りやすいもの、使いやすそうなものを選んでみてください。

アロマディフューザーを使った方法

最も一般的なのが、アロマディフューザーを使って香りを楽しむ方法です。 アロマディフューザーは、本体に水を入れたあと、その中にアロマオイルを数滴、垂らして使うものです。電源を入れると霧状の水が出てきて、それと同時に香りも広がる仕組みになっています。
具体的な方法は、以下のようになります。
朝・夜とこの配合でアロマオイルをディフューザーにセットして使用するようにしてください。

朝…ローズマリー2滴、レモン1滴を水50mlに入れて使用する

夜…ラベンダー2滴、オレンジ1滴を水50mlに入れて使用する

アロマディフューザーは、安いものだと数千円ほどから販売されています。対応する部屋の広さやタイマーなどの機能の有無、デザインなど、さまざまなものがありますので、使いやすいものを選ぶとよいでしょう。

アロマペンダントを使った方法

手軽にアロマを取り入れる方法としてもうひとつ紹介したいのが、アロマペンダントを使った方法です。電源の有無や場所を問わず使用できるので、大変便利な方法です。 アロマペンダントを使うなら出かけることが多い午前中がよいでしょう。

朝、ペンダントにアロマオイルをセットして、本人に首にかけてもらいます。香りがどのくらい続くかは、ペンダントの種類などにもよりますが、しばらくの間は香りを楽しめるでしょう。 アロマペンダントの種類はいくつかあり、木製やステンレス製のペンダントの中にフィルターが入っていて、アロマオイルを垂らして使うものや小さな瓶の中にアロマオイルを入れて使うものが多いです。 価格は商品によってさまざまですが、1,000円前後〜数千円がメイン。デザインや材質もいろいろとあるので、使う本人の好みや使い勝手を考えて選びましょう。

アロママッサージを行う方法

アロマオイルを使ったマッサージです。少し手間はかかりますが、香りを楽しめることに加えて、触れ合うことで安心感を得たり、コミュニケーションをとったりすることができる点がアロママッサージの良いところだと思います。

アロマオイルは原液では使えないので(使用出来るものもあります)、キャリアオイルと呼ばれるもの(ホホバオイル、スイートアーモンドオイルなど)に混ぜて使います。
アロマオイルの濃度が1%以下になるようにキャリアオイルを混ぜ合わせたら、マッサージ用オイルは完成。 このオイルを使って、手や足などを手のひらでこするようにマッサージすると、香りを楽しみながら血行促進効果も期待できます。
ただし、皮膚にオイルをつけるので、皮膚の弱い方は注意が必要です。事前に二の腕の内側につけるパッチテストをおこなってからマッサージをすると安心です。

※パッチテストはオイルを皮膚につけて24時間以上たって、かゆみや赤みなどの異常がないかどうかを確認するものです。

認知症は、一般的に40~50代で始まるもの?

また、実は認知症の多くは、初期症状が出るまでに長い時間を要するという特徴があります。

例えばアルツハイマー型認知症の場合、初期症状が出るまでに約20年間もの“無症期間”があるそうです。60代後半で初期症状が出ても、実は約20年前の40代後半頃から認知症がひそかに始まっている可能性があるのです。

つまり認知症は、一般的に40~50代で始まるものと考えられます。「認知症なんてまだまだ先の話!」と侮らず、40~50代から予防意識を持ちましょう。

40~50代から認知症を予防するためには、以下のポイントに注意しながら生活習慣を見直すことが大切です。

バランスの良い食生活

イワシやサバなどの青魚、うなぎ、鮭、すじこなど、脳に良いDHAが多く含まれる食品は認知症予防に効果的だといわれています。記憶力を強化する「レシチン」という成分を含む、大豆食品もおすすめです。
摂取カロリーに気を配り、アルツハイマー型認知症につながる可能性のある肥満を予防することも重要です。
脳に良い食品を摂りながら摂取カロリーがオーバーしないよう、日頃からバランスの良い食生活を心がけましょう。

良質な睡眠

脳が活動したときに生成される老廃物「アミロイドβ」の蓄積が、アルツハイマー型認知症の原因になるといわれています。睡眠をとることでアミロイドβを脳から洗い流す機能が高まるそうなので、良質な睡眠をとって脳をきちんとクリーニングしましょう。

脳のトレーニング

頭を使ったり指先を動かしたりといった知的活動によって神経細胞を活性化することは、認知症予防に役立ちます。具体的には囲碁、裁縫、パズル、読み書き、ボードゲームなどです。他人との会話も脳を活性化させるそうなので、いろいろな人と会って積極的にコミュニケーションをとりましょう。

そして、アロマの香りの刺激で認知機能を向上させ、楽しく気軽に認知症予防をしていきましょう

まとめ

大学の研究によっても明らかになっているアロマテラピーのパワー。
認知症は他人事ではないので、高齢になる前から、バランスの良い食事、良質な睡眠、会話、そして、アロマの力を借りて早めに予防を始めたいですね。

また、気軽に取り入れられるアロマを使えば、介護される側もする側も、気分良く過ごすきっかけにもなると思います。

アロマを上手に取り入れて、体と心が平安でいられますように。

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